二次予防とは、病気を早期発見、早期治療すること

検査フロア

投稿日:2020/07/25

予防医療に特化した診療所を始めた理由

小池クリニックを開設したのは平成元年。当時、全国で人間ドックを行っている医療機関は増えていましたがその多くは病院に付属した施設でした。東京や大阪といった大都市では人間ドック専業の診療所も見られましたが和歌山という地方都市で背後に病院も持たず、人間ドックを主とした診療所を単独で開業するのは「まれ」でした。

「病気は早いうちに治療すれば軽くすむ。癌であっても早期に発見すれば完治可能」です。例えば胃がんの場合、早期胃がんであれば内視鏡による手術で済みます。ところが発見が遅くなると、医療費もかさむし、入院日数も伸びるのに反し、予後は良くない。

しかも、患者さんの医療費負担が少ないと言うことは健康保険財政からの支出も少なくて済むということです。患者さんにとっても社会にとってもメリットのある健診事業を中心にした診療所を始めるよう考えました。医師として今まで以上に社会貢献ができると考えたのです。

胃カメラを健診に積極採用

当時の人間ドックでは胃の検査はレントゲンで行っていました。胃カメラに変更するというオプションも用意されている施設もありましたが、どの施設も基本はレントゲンでした。健診可能な人数はレントゲンが有利ですが、検査精度を考えると胃カメラが最適です。

初期の胃がんを見つけるためには胃カメラが適していることが誰よりも分かっています。ですから私が悩んだのは「胃カメラで検査をするけれど、どうすればより多くの人が胃カメラを選択してくれるか」ということでした。

早期胃がんには症状がありませんから、痛くもかゆくもないものに苦痛を伴う検査を選ぶ方は少なかった。当たり前です。しかし「胃カメラ」を選ぶ方が少なくなれば、私が健診を始めた理由が半減します。そこで、私はできるだけ苦痛を与えない方法を選択したのです。

苦しくない胃カメラへ

当時の胃カメラ検査では今のように軽い鎮静剤を使わずに検査するのが普通でした。胃がんが疑われる方なら、多少苦しくても「癌かどうかわかるなら」と我慢もできますが、何の症状もない健康診断に来た方は“苦しいのは嫌”でした。だから楽なレントゲン検査を選ばれる方も多かったのです。

それまでの私の内視鏡は、原則として鎮静材は使わなかったのです。そこで私は胃カメラ希望者に軽い鎮静剤を処方するようにしました。これだと患者さんはうとうとしている間に胃カメラが終わりますので苦痛が全くありません。しかも、個々の患者さんにあわせて投与量を調整し、胃カメラが終わったあたりで目覚めるようにしたのです。しかも、人は緊張が取れて安心すれば楽になります。ですから鎮静剤だけでなく声をかけて緊張を解くようにも心がけています。

「苦痛なくより良い検査を受けていただくために」どうすればよいのかを考えた結果でした。胃カメラの方がより早期の胃がんが見つかることのメリットを考えると“胃カメラを選択してほしい”という気持ちでいっぱいでした。その結果、いまでは胃カメラ選択が普通になり、開業以来の胃がん早期発見数も100件近いです。

自由診療と保険が利用できる細胞診

健康診断で行う胃カメラは自由診療になります。胃カメラで異常が見つかり、生検しその細胞に癌があるかどうかを見極めなくてはなりません。ところが生検や細胞診の費用まで健康診断の費用に含めると高額になりますし、ある人もない人も同一価格にすると生検や細胞診が不要な方の負担が多くなってしまいます。だからといって、健診では生検せず、異常があった方は再度、保険診療で胃カメラをするというのも患者さんの肉体的、精神的負担が増えることになります。

そこで県の国民保険連合会に出向き、事情を説明して健康診断で実施した胃カメラで異常があったらそのまま生検し、生検の費用だけ保険診療にしてほしいと頼みこみました。どこをどうしたのか詳しくは知りませんが、健診の胃カメラで生検だけ保険診療ができることになりました。国保連合の英断だったと思います。健康保険にとっても胃カメラ代を負担しなくていいから経費削減になるはずです。患者さんにとっても保険者にとっても良い判断をしていただいたと感謝しています。

ピロリ菌の除菌

健康診断で行う胃カメラは自由診療になります。胃カメラで異常が見つかり、生検しその細胞に癌があるかどうかを見極めなくてはなりません。ところが生検や細胞診の費用まで健康診断の費用に含めると高額になりますし、ある人もない人も同一価格にすると生検や細胞診が不要な方の負担が多くなってしまいます。だからといって、健診では生検せず、異常があった方は再度、保険診療で胃カメラをするというのも患者さんの肉体的、精神的負担が増えることになります。

そこで県の健康保険担当部署に出向き、事情を説明して健康診断で実施した胃カメラで異常があったらそのまま生検し、生検の費用だけ保険診療にしてほしいと頼みこみました。どこをどうしたのか詳しくは知りませんが、健診の胃カメラで生検だけ保険診療ができることになりました。国保連合の英断だったと思います。健康保険にとっても胃カメラ代を負担しなくていいから経費削減になるはずです。患者さんにとっても保険者にとっても良い判断をしていただいたと感謝しています。

最近話題のピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の除菌治療も、もっとも早い時期からはじめ、相当数の治療例があります。ピロリ菌が胃がんを引き起こす可能性があることが分かると、胃カメラでピロリ菌の検査も行い、保菌者には除菌をすすめるようにしました。初期胃がんにすらならないのならこんなに良いことは無いからで す。

除菌は1週間、薬を飲み続ける必要がありますのでどうしても費用が発生します。今でしたら保険適応になっているのでどこの医療機関でも安くできますが、私が始めた頃は保険外でした。それでも胃がんになる可能性を少しでも減らせるならと勧めたのです。当然、費用は最小限におさえました。

その後、ピロリ菌除菌の効果が国でも認められ、保険適応になったことは喜ばしいことです。

これが元来、病院や診療所で行われている医療行為です。このことで当クリニックがモットーとしていることは、自分の専門分野(糖尿病、消化器等)の治療を守り、専門以外の疾患あるいは入院治療を必要とする患者さんは、速やかにかつ適切にご紹介することにしています。長年のネットワークによるご紹介先として、和歌山市内では、和歌山医大、日赤病院、労災病院、済生会病院等があります。胃がんなどを発見すれば、場合によっては早急に治療する必要がある場合もあります。緊急を要する患者さんだと私が判断した時は、時間外であることを承知で精密検査と治療をお願いしたこともあります。

私の医療は検査に頼るのではなく、触診や話の内容などを総合して異常を見つけ出すのです。検査は私の診断結果を傍証してくれるだけのものなのです。これが私の医師としてのプライドです。

和歌山県立医科大学病院、和歌山日赤病院、和歌山済生会病院など高度な治療が可能な病院だけでなく、民間病院にも高度な治療技術を持った医師がたくさんいます。そのような病院や医師を中心にネットワーク作りを行ったのです。胃カメラで切除可能な胃がんなら後輩の〇〇医師、転移の疑いもありそうな癌なら医大など、患者さんの状態に応じて、早く適切な治療が行える医療機関を紹介してきました。

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