一次予防

一次予防とは、病気にならないための生活習慣を身につけること

県警の産業医に推薦される

「和歌山毒物カレー」事件がおこった直後に産業医に任命されました。カレー事件が起こり、現場責任者の過労死が起こってからの任命でした。産業医というのはその職場で働く人々の健康を守る仕事です。私の場合は「嘱託」でしたのでそれほど大きな責任を負っているわけではありませんが、“過労死”を目の当たりにして「指示がくるまで」待っていることはできません。私の頭から『どうすれば警察職員が健康になれるか』という課題が離れなくなりました。

1)休業率、外来保健点数が全国警察でほぼワースト1。
2)喫煙率、肥満率が全国警察の平均以下。
3)精神疾患の割合が多い。

ことがわかりました。

県警の産業医に推薦される

警察官という職業

県警本部に出向くと捜査一課などはたばこの煙でもうもうとした状態、しかも遅くまで多くの捜査員が残業しているという状態でした。昼間捜査に出て、本部に戻り休憩を兼ねた夕食後、書類を整理したり、情報交換したりする。帰途に就くのは毎日22時前後、頭が下がる思いでしたが、これでは健康に良くない。 一日4食、ヘビースモーカー、不規則な勤務が多い、このような生活が体に良いわけがありません。仕事中心を通り越して仕事だけの生活では、体ばかりではなく、心にもさまざまな問題が出てきます。

当時の和歌山県警の職員一人当たりの年間医療費は全国の警察中、いつもワースト10に入っていました。平成5年から平成9年までの5年間では“ワースト1に3度も輝いて?いる”状況でした。当時の肥満率は全国警察平均40%弱なのですが、和歌山県警では45%前後と5ポイントも高かった。喫煙率は全国警察平均45%程度なのに対し和歌山県警は50%程度とこれも5ポイント高かったのです。仕事のストレスが高い肥満率や高い喫煙率につながっていた。しかもこれは心筋梗塞など突然死を引き起こしやすいし、ガンなどを含めた生活習慣病になる可能性も高くなる。しかし、私は医者ですから健康面からの改善は提案できます。病に倒れる警察官が少しでも減れば、和歌山県の治安にとっても良いことですし、悲嘆にくれるご家族をなくすこともできるのです。

警察官という職業 病気にならない環境作り

病気にならない環境作り

禁煙をすすめて、残業を減らすためにどうすれば良いのかを考えました。

タバコの害は明らかなのに県警本部では煙が充満している状況でした。1日に2箱とか3箱消費する警察官も普通にいましたし、驚いたことに1人で2本も3本も火をつけている。どうやら仕事を進めていくうちに吸いかけのタバコを灰皿に置いているのを忘れて、次のタバコに火をつけるようです。それを複数の人が繰り返すものですから当然、室内は煙がもうもうとした状態になります。

「室内禁煙」を打ち出した時は県警こぞって大反対でした。“喫煙は必要悪”という人も多かったのです。その声に負けず、一人で『禁煙!』と叫び続けました。幸い、幹部の方には私の禁煙の必要性を理解してくださる方もいて室内禁煙が決まりました。

それでも室内で吸わないだけで、外の喫煙スペースなどでの喫煙は続いていましたが、1人当たりの喫煙量は減りましたし、受動喫煙による被害は防げるようになりました。

「午後6時になって、仕事は終わるけれども、まだ上司がいるから帰れない」こんな方が何人もいるのです。当然、時間つぶしをしなければなりません。しかも残業代は予算の関係からある程度で、カットされていましたので残っている割には残業代がつかないといった状況でした。

そこで“ノー残業デー”を提案し、上司が真っ先に帰宅することをお願いしました。そうすることで部下も気兼ねなく帰れるようになりました。

病気にならない環境作り 病気にならない環境作り

「歩け!歩け!」で肥満率だけでなく喫煙率も改善

和歌山県警では「ヘルスアップフォークラリー」といって、目標を設定し毎月どれだけ歩いたかを競っています。本部だけでなく、北は橋本署から南は新宮署、鑑識や機動捜査隊、交通機動捜査隊も含め警察職員は全員参加です。

それまでも県警でウォークラリーは毎年行われていましたが、半年間の事業でした。実施期間内には体重が減少し、実施期間が終了したら体重が元に戻るという循環を繰り返していたのです。たしかに、公の組織では年度をまたいでの事業実施には困難が伴います。中には「事業実施中の半年間で少しでも痩せられたのだからそれもなしに太り続けるよりは意味がある」と考える向きもありました。でも私はそれでは意味がないと考えました。

そこで、事業を2年通年で実施していただくようにお願いしたのです。すると体重が減り始めただけでなく、喫煙者も減ってきたのです。そんな効果があるとは私も思っても見ませんでした。しかし、考えてみると当然のことでした。

だから、私は「健康になりたいなら、歩け!歩け!」ということを推奨しています。私も暇が無くても、歩く時間を捻出して歩いています。健康になるなら1日8,000歩あるく、これが県警のウォークラリーを通して得られた結論です。

「歩け!歩け!」で肥満率だけでなく喫煙率も改善 「歩け!歩け!」で肥満率だけでなく喫煙率も改善 「歩け!歩け!」で肥満率だけでなく喫煙率も改善

二次予防

二次予防とは、病気を早期発見、早期治療すること

予防医療に特化した診療所を始めた理由

小池クリニックを開設したのは平成元年。当時、全国で人間ドックを行っている医療機関は増えていましたがその多くは病院に付属した施設でした。東京や大阪といった大都市では人間ドック専業の診療所も見られましたが和歌山という地方都市で背後に病院も持たず、人間ドックを主とした診療所を 単独で開業するのは「まれ」でした。

「病気は早いうちに治療すれば軽くすむ。癌であっても早期に発見すれば完治可能」です。

例えば胃がんの場合、早期胃がんであれば内視鏡による手術で済みます。ところが発見が遅くなると、医療費もかさむし、入院日数も伸びるのに反し、予後は良くない。

しかも、患者さんの医療費負担が少ないと言うことは健康保険財政からの支出も少なくて済むということです。

予防医療に特化した診療所を始めた理由

患者さんにとっても社会にとってもメリットのある健診事業を中心にした診療所を始めるよう考えました。医師として今まで以上に社会貢献ができると考えたのです。


胃カメラを健診に積極採用

当時の人間ドックでは胃の検査はレントゲンで行っていました。胃カメラに変更するというオプションも用意されている施設もありましたが、どの施設も基本はレントゲンでした。健診可能な人数はレントゲンが有利ですが、検査精度を考えると胃カメラが最適です。

初期の胃がんを見つけるためには胃カメラが適していることが誰よりも分かっています。ですから私が悩んだのは「胃カメラで検査をするけれど、どうすればより多くの人が胃カメラを選択してくれるか」ということでした。

早期胃がんには症状がありませんから、痛くもかゆくもないものに苦痛を伴う検査を選ぶ方は少なかった。当たり前です。しかし「胃カメラ」を選ぶ方が少なくなれば、私が健診を始めた理由が半減します。そこで、私はできるだけ苦痛を与えない方法を選択したのです。

予防医療に特化した診療所を始めた理由 胃カメラを健診に積極採用

苦しくない胃カメラへ

当時の胃カメラ検査では今のように軽い鎮静剤を使わずに検査するのが普通でした。胃がんが疑われる方なら、多少苦しくても「癌かどうかわかるなら」と我慢もできますが、何の症状もない健康診断に来た方は“苦しいのは嫌”でした。だから楽なレントゲン検査を選ばれる方も多かったのです。それまでの私の内視鏡は、原則として鎮静材は使わなかったのです。

そこで私は胃カメラ希望者に軽い鎮静剤を処方するようにしました。これだと患者さんはうとうとしている間に胃カメラが終わりますので苦痛が全くありません。しかも、個々の患者さんにあわせて投与量を調整し、胃カメラが終わったあたりで目覚めるようにしたのです。しかも、人は緊張が取れて安心すれば楽になります。ですから鎮静剤だけでなく声をかけて緊張を解くようにも心がけています。

「苦痛なくより良い検査を受けていただくために」どうすればよいのかを考えた結果でした。胃カメラの方がより早期の胃がんが見つかることのメリットを考えると“胃カメラを選択してほしい”という気持ちでいっぱいでした。

その結果、いまでは胃カメラ選択が普通になり、開業以来の胃がん早期発見数も100件近いです。


自由診療の健診と保険が利用できる細胞診

健康診断で行う胃カメラは自由診療になります。胃カメラで異常が見つかり、生検しその細胞に癌があるかどうかを見極めなくてはなりません。ところが生検や細胞診の費用まで健康診断の費用に含めると高額になりますし、ある人もない人も同一価格にすると生検や細胞診が不要な方の負担が多くなってしまいます。だからといって、健診では生検せず、異常があった方は再度、保険診療で胃カメラをするというのも患者さんの肉体的、精神的負担が増えることになります。

そこで県の健康保険担当部署に出向き、事情を説明して健康診断で実施した胃カメラで異常があったらそのまま生検し、生検の費用だけ保険診療にしてほしいと頼みこみました。どこをどうしたのか詳しくは知りませんが、健診の胃カメラで生検だけ保険診療ができることになりました。国保連合の英断だったと思います。健康保険にとっても胃カメラ代を負担しなくていいから経費削減になるはずです。患者さんにとっても保険者にとっても良い判断をしていただいたと感謝しています。


ピロリ菌の除菌

最近話題のピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の除菌治療も、もっとも早い時期からはじめ、相当数の治療例があります。

ピロリ菌が胃がんを引き起こす可能性があることが分かると。胃カメラでピロリ菌の検査も行い、保菌者には除菌をすすめるようにしました。初期胃がんにすらならないのならこんなに良いことは無いからです。

除菌は1週間、薬を飲み続ける必要がありますのでどうしても費用が発生します。今でしたら保険適応になっているのでどこの医療機関でも安くできますが、私が始めた頃は保険外でした。それでも胃がんになる可能性を少しでも減らせるならと勧めたのです。当然、費用は最小限におさえました。

その後、ピロリ菌除菌の効果が国でも認められ、保険適応になったことは喜ばしいことです。

三次予防

三次予防とは、病気の治療を行うこと

これが元来、病院や診療所で行われている医療行為です。このことで当クリニックがモットーとしていることは、自分の専門分野(糖尿病、消化器等)の治療を守り、専門以外の疾患あるいは入院治療を必要とする患者さんは、速やかにかつ適切にご紹介することにしています。

長年のネットワークによるご紹介先として、和歌山市内では、和歌山医大、日赤病院、労災病院、済生会病院等があります。

胃がんなどを発見すれば、場合によっては早急に治療する必要がある場合もあります。 緊急を要する患者さんだと私が判断した時は、時間外であることを承知で精密検査と治療を お願いしたこともあります。

私の医療は検査に頼るのではなく、触診や話の内容などを総合して異常を見つけ出すのです。 検査は私の診断結果を傍証してくれるだけのものなのです。これが私の医師としてのプライドです。

和歌山県立医科大学病院、和歌山日赤病院、和歌山済生会病院など高度な治療が可能な病院だけでなく、民間病院にも高度な治療技術を持った医師がたくさんいます。そのような病院や医師を中心にネットワーク作りを行ったのです。

予防医療に特化した診療所を始めた理由

胃カメラで切除可能な胃がんなら後輩の〇〇医師、転移の疑いもありそうな癌なら医大など 患者さんの状態に応じて、早く適切な治療が行える医療機関を紹介してきました。